無い物ねだりの堂々巡り
独りじゃないと思うとすごく嬉しかった。
二人にしか分からない言葉で秘密の会話をしてるみたいだった。
自分は誰にも理解されず独りで生きていくものだと思っていた。
結婚や出産や人並みに人の営みがあったとしても、どこかではずっと独りであることを感じながら生きていくのだろうと思っていた。
世界の色が急に鮮やかになって、眩しくて光り輝いた日があった。
生き苦しい毎日に光が射して、温もりと安心を知った。
そして私は怠けた。
自分自身を感じ、試し、確認することをしなくなった。
独りで生きてきた、それを受け入れて覚悟していた、そんな強い自分の姿が次第に薄れ消えて、終いには独りでは何もできなくなった。
独りが怖くなった。
あんなに独りだったのに。
言葉を覚えた。
共有する喜びと、義務を感じた。
そして私は空っぽになった。
こんなに情けなくてみっともない自分になるとは思っていなかった。
今度はそれで生きているのが辛い。
空っぽのくせにまだ考えて喋るこの存在。
それをまた考えるのも嫌になる。
考えることもなくなれば、もう完全になくなってしまうだろう。跡形もなくなるだろう。